龍子の扉


龍子は、中谷吉隆の俳号です。

中谷取材ノート 過去に取材した思い出深いシーンを
紹介

中谷取材ノート ―黒い女豹-女優フランソワーズ・アルヌール―

黒い女豹-女優フランソワーズ・アルヌール

外国から輸入された映画(いわゆる洋画)が日本で盛んに上映されるようになるのは、昭和30年代初めころからで、封切館での入場料は高く、当時の自分としては中々見られず、なんとか早く二番館で上映されるのを願ったものだ。

主演の男優、女優の演技もさることながら、当時のヨーロッパやアメリカの生活様式や風俗を垣間見ることができるのも魅力だった。そういった俳優のなかで強く印象を受けた一人がフランスの男優ジャン・ギャバンである。しゃがれた渋い声での演技には魅せられていた。その相手役として登場したのが女優フランソワーズ・アルヌールで、『ヘッドライト』という映画だった。

外国の女優といえば、おおかたが大柄で魅力的な肉体を誇るのが相場でそのヴォリュームにも魅せられていた。だがアルヌールは日本人並に小柄で動きが実にシャープで、顔立ちからすると大きな目に特徴がありその目の動きが素晴らしく、調べてみると当時フランス領のアフリカのアルジェリア出身のフランス人ということだった。今日のようにレンタルビデオやDVDなど無い時代で、それ以来アルヌールの映画が三番館などでかかると何度も通った。

そのアルヌールが来日し、ある婦人誌の依頼で撮影するチャンスを得たのは昭和36(1961)年。スケジュールが決まってからは興奮して寝られなかった。帝国ホテルの一部屋で撮ることになるが、黒いワンピースに小麦色の身を包んだ彼女は小柄で目の表情も豊かに、こちらの注文に答えてくれた。最後には自分で一輪挿からカーネーションを手に持ちポーズを取ってくれると言うサービスぶり。その動きは29歳だったがまさに黒い女豹を思わせるもので、カメラを構える手が最初は興奮で震えていたが、それも収まり引き込まれていっていて、あっと言う間に2本のフィルムを費やしていた。仕上がりを一刻も早く確認したく暗室に飛び込んだものだった。

昭和36(1961)年1月16日 帝国ホテルで。

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